2018年3月7日水曜日

目は口ほどに、とはなるほど。「コララインとボタンの魔女」


こんにちは。ひとりです。

映画を昨晩観ました。「コララインとボタンの魔女(原題:Coraline)」です。日本では2010年に公開されています。


原作はニール・ゲイマンの児童文学作品で、引っ越したばかりの家のドアから“もう一つの世界”に入り込んだ少女コララインの冒険を描きます。出版は2002年で、ヒューゴー賞を2003年に受賞しています。


1コマごとに撮影されるストップモーション・アニメ


物語はもちろん、その映像手法に惹かれます。人形やセットを1コマごとに動かして撮影するストップモーション・アニメ(パペットアニメ)です。映画「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」(1993年)でも同手法が取り入れられており、監督は同じヘンリー・セリックです。

製作期間は4年で、セット数は130以上。人形の顔の変化は、異なる表情を取り換えて表現し、コララインのバリエーションは20万にも上るといいます。

辻一弘さんが映画「ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男」でアカデミー賞のメーキャップ&ヘアスタイリング賞を受賞したことが話題に上がっていますが、本作でも日本人イラストレーターが携わっています。


同作でアニー賞を受賞した、日本人イラストレーター


キャラクターや風景などのコンセプトアートを担当した上杉忠弘さんで、第37回アニー賞の美術賞を受賞しています。アニー賞はアニメ界のアカデミー賞とも呼ばれています。

アニメの人物は可愛らしさを優先するあまり、頭や目が不自然に大きいデザインになりがちです。上杉さんはファッションのイラストレーターでもあるので、アニメの常識にとらわれずに本作でも女性の頭を小さく、なるべく自然になるように描かれています。

ヘンリー・セリック監督と上杉さんが最初に会ったのは2005年頃で、お互いがストップモーション・アニメの巨匠、レイ・ハリーハウゼンや、チェコのアニメ作家、ヤン・シュワンクマイエルのファンであることが分かり、すっかり意気投合したといいます。


目は口ほどにものを言うとはなるほど、ボタンの目からは…


また3Dの立体感が加わることで今作は、人物の感情の起伏がよく伝わってきます。

主人公が暮らす現実の世界は、閉塞感を出すために3D効果は抑え目にして、音楽も平板に。“もう一つの世界”は奥行きと華やかさをもたせながら、どこか地に足がつかない居心地の悪さが感じられるなどの違いが見えます。「目は口ほどにものを言う」とはなるほど、ボタンの目をした登場人物たちからは感情変化が見えません。

また“もう一つの世界”で繰り広げられる、ネズミたちのサーカスが印象的です。ネズミのサーカスが飛び出るシーンは1分足らずで、物語に印象は残さないかも知れませんが、その表現方法に私は、画面に吸い寄せられるような不思議な感覚を味わいました。