2018年5月4日金曜日

小中学校が知財教育に注力。「子ども発明家」が日本救う


こんばんは。ひとりです。

こどもの日(5日)を前に、新聞にこんな記事が掲載されています。

「子ども発明家」が日本救う? 政府も知財教育に注力(法務インサイド)
日経産業新聞 2018年5月4日


知財教育を推進するも、現場がついてこない


全国の小中学校で2018年度から、知財教育が任意で始まります。2017年3月に改訂された学習指導要領に基づくものです。小学校では2020年度から、中学校では2021年度から、各教科の教科書で知財に関する表記を充実させる模様です。

一方で、知財教育を受けてきていない教師、考え方が浸透していない教育現場のもとでは、いくら政府が知財教育に注力し始めようが成果を得るのは難しそうです。

そもそも知財教育自体が認識されていないのが現状であり、何よりそれは現場の声からも見えます。
  • 知財教育まで手が回っていない
  • 先生や学校の考え方により取り組みに差がある
  • 中学校で知財教育に手厚く取り組んでいる学校は少ない
  • 学校全体が知財に興味を持っていない
(特許庁2017「知財教育に資する教材のあり方に関する調査研究報告書」)

教育現場の声を知ってか知らでか、知財教育を後押しする政府の知的財産戦略本部は次のように話しています。
「特許の取り方など細かな話だけでなく、日常生活でふと疑問に思ったことや、みつけた課題を大切にして新たなものを生み出す力を育てたい。それが日本企業の競争力の底上げにもつながるはずだ」

特許の国際出願件数(2017年)は、中国が日本を抜いて初めて2位となりました。(WIPO、世界知的所有権機関)

中国ではすでに「指定校」での知財教育が2015年度から始まっています。2020年度までに国が全国で100校、省レベルでは1000校のモデル校を指定するそうです。

中国に特許出願件数で追い抜かれるなど、日本の創意工夫の力に悲観的な見方が増えています。知財教育が教育現場ではなく、政府主導という点でも、中国の取り組みに負けないようにという意図が背景にありそうです。


“創造性が豊かな子”で終わらせないために


新聞では11歳と14歳、2人の発明成果(特許取得)を取り上げながら、その発想力と行動力を紹介しています。

いずれにも共通するのが弁理士の存在です。家族がそうであったり、また弁理士の知人が身近にいたりすることです。

弁理士が身近な存在でなければ、両例とも“創造性が豊かな子”で終わってしまい、特許取得には至らなかったでしょう。事実、「特許取得までに至るケースは年1件あるかないか」です。(発明協会、少年少女発明クラブ 運営)

創造性を育む教えは、教育現場でできたとしても、その先の行動を示すことや、結実させる教育がありません。

それを補うのが例えば日本弁理士会による活動です。


弁理士会が提供する、知的財産に関する出張授業


各地域に設置された日本弁理士会の支部が、その地域にある学校からの要請を受けて、身近な商品等を例に挙げながら知的財産に関する出張授業を提供しています。

素晴らしい取り組みですが、1点課題があります。学校からの要請がなければ動かないということです。

先にも紹介しましたが、そもそも知財教育自体が認識されていない教育現場があります。先生や学校の考え方で取り組みに差があるなかでは、知財教育を受けていない子どもが大半でしょう。

私も残念ながらそんな教育、受けたことがありませんし、そんな話をする先生を見かけたことがありません。

発明や特許取得に限ったことではありませんが、今回の記事からは、家族やその家族が付き合う人の考え方や職業が、子どもの考え方や行動に大きく影響していることが分かります。

以前に投稿した記事が参考になります。
2018/4/10
親の所得と教育格差。回答者の6割、4600人超が格差を容認
「学校教育に対する保護者の意識調査」が先日、新聞に掲載されました。教育格差があるのは「当然」「やむをえない」と62.3%が回答。教育格差の容認が6割を超えたのは4回の調査で初めてです。

教育格差は事実ですが一方で、情報や教育は求めれば得られるようになりました。


特許庁、「とっきょちょうキッズページ」を開設


特許庁が4月18日、ウェブサイトに「とっきょちょうキッズページ」を開設しました。漫画をふんだんに使い、子どもたちが読みやすいようにという工夫が見えます。

・特許庁、子ども向け新Webサイトをオープンします(METI-経済産業省)
特許庁は、発明家のエピソードをわかりやすく説明した漫画を配布したり、毎夏、子どもたちを対象としたイベントを開催したりして、幼少期から創造や工夫の楽しさ知ってもらおうと、様々な活動や情報発信を行っています。

・とっきょちょうキッズページ
主なコンテンツは「みんなのしつもん」「発明まるわかり」「この音、知っている?」「かっこいいデザイン!使いやすいデザイン!」の4つを用意し、順次、コンテンツを追加しながら、創造力・課題解決力育成の糧を提供します。

インターネットの負の面が最近、取り沙汰されていますが、それを踏まえて、自身で情報を選別できる力を身に付けたいものです。