2018年11月7日水曜日

きっかけは植物学者からのメール。三浦しをん「愛なき世界」


こんにちは。ひとりです。

「愛なき世界」(三浦しをん 著)を今、Kindle(キンドル)で読んでいます。


植物学研究の姿に迫った物語で、同著者の「舟を編む」が職業小説として、書評欄で度々比較に挙げられています。

東京・本郷の洋食店に勤める藤丸陽太は出前にいったT大で、植物学を専攻する大学院生の本村紗英と知り合う。 
植物の神秘的な世界を教えてもらいながら、藤丸はちょっとずれていても純粋な彼女にひかれていく。だが本村の心を占めていたのは、植物の謎を突き止めたいという思いだった。

小説を書くきっかけは、東京大学大学院の塚谷裕一教授から三浦さんに送られたメールです。辞書編集の世界を描いた「舟を編む」を読んだ塚谷教授から三浦さんへ、植物学も小説になるのではと提案があったそうです。

本書のように、植物学の実験で使われるシロイヌナズナや専門的な研究の用語がたくさんでてくる小説は、国際的にみても珍しいと塚谷教授。

私は途中まで読み進めましたが、専門的な研究用語にも違和感なく、濁さずに表現されることでかえって物語に透明度と奥深さを感じさせます。映像化されるのも近いのではないでしょうか。


塚谷教授の講演会には、三浦さんがゲストで登壇


塚谷教授の講演会が10月14日、東京大学の小柴ホールで開催されました。

塚谷裕一教授(つかや ひろかず)
1964年、神奈川県生まれ。東京大学大学院理学系研究科教授、植物学者。発生生物学、熱帯アジアの菌寄生植物を現地調査している。「スキマの植物の世界」などのエッセーも。

「植物学から『愛』を物語る」と題した講演では、腐生植物の新種を東南アジアのボルネオ島の熱帯雨林にまで出かけて調査した体験を語られました。腐生植物は「森を食べる植物、豊かな森のバロメーター」と塚谷教授。

また講演には三浦さんもゲストとして登壇されました。

塚谷教授は対談で、学生の頃小説を書いたことがあると紹介し、「研究者にはコツコツとする努力も瞬発力も必要。自分の発見を納得させる文章を書くことも大切です」と強調されています。

三浦さんは、「前の世代からの積み重ねがあって次の世代にもつながる。そうした職業に興味があります」と。三浦さんは過去にも、仕事を始め、ものごとに打ち込む人々をテーマにした作品が多く、『三浦しをんの「ふむふむ」』もその1つでしょうか。


女性が仕事に打ち込む様子を、三浦さんがインタビュー形式で紹介する企画です。

2018/07/01
三浦しをんさんの新刊。タニジュン先生でオダサク賞? って
三浦しをんさん新刊「あの家に暮らす四人の女」。谷崎潤一郎の「細雪」にオマージュを表した小説で、舞台は本家関西から東京・杉並の洋館へ。また4姉妹ではなく、2人は母娘、2人は他人という女性4人の共同生活が描かれています。「タニジュン(谷崎潤一郎)先生でオダサク(織田作之助)賞? って一瞬混乱したんです」。とは受賞の一報を受けた三浦さんの感想です。