2018年1月25日木曜日

有価証券報告書は、会社の経営成績を示す“通信簿”


こんばんは。ひとりです。

日本取引所グループが主催する株式セミナーが24日、大阪証券取引所ビルで開催されました。内容は株式投資基礎講座で、2日間に渡る内容です。24日はその2日目で「決算短信・有価証券報告書の見方」をテーマに開催されました。

1月24日(水)18:30~20:00
「決算短信・有価証券報告書の見方」
講師:東京証券取引所 上場部担当

1月17日(水)18:30~20:00
「会社四季報の見方」
講師:日本証券業協会 証券・金融インストラクター


お粗末な資料と時間配分が課題


セミナーは残念な内容でした。その理由は2つ。使い回しと思われる資料と時間配分です。いずれも講師自身が自覚しているものと思われます。

セミナーの時間配分にも関係しますが、配布された資料は90ページ。1時間半のセミナー時間内で説明が行き届かないのは当初から明らかでした。セミナー冒頭で講師自身が全ての内容を説明しきれませんと宣言する始末です。

また表紙の日付だけを更新した使い回しと思われる資料。そう感じた理由の1つは情報の古さにあります。

説明で挙げられた銘柄の1つに花王があります。資料に掲載された決算短信の日付は、2016年(平成28年)12月期のもの。またヤフーファイナンスのキャプチャー画像は2017年7月14日、この時の株価は6,740円を付けています。花王の株価は1月24日現在、7,697円まで上がっています。

セミナーのテーマ「決算短信・有価証券報告書の見方」に話が及ぶまで、資料を32ページもめくりました。いざ該当箇所に入っても、残り時間を気にするあまり受講生への分かりやすさよりも資料を読み切ることにまっしぐらでした。

銘柄を選別するためのセミナーではないので情報の新しさはさほど求められませんが、それにしてもお粗末なセミナーでした。


株式投資に使える実務知識を期待したが


決算短信・有価証券報告書の見方がテーマとあって、今回のセミナーには株式投資の銘柄選別に使える実務知識の身につけ方を期待していました。

ここで1つ疑問が。東証社員が講師を務めるセミナーはどのようにして講師を選んでいるのでしょうか。また選ばれた、もしくは立候補した講師は事前に東証社員同士でセミナー内容の品質チェックは行わないのでしょうか。

このまま興味を失うのはもったいないような気がして、セミナー受講前に調べておいた資料を見直すことに。過去の新聞や雑誌を調べてみると、このような関連記事が見つかりました。


有価証券報告書の読み方を、新聞や雑誌が定期的に解説


例えば日経新聞夕刊に2017年7月18日〜7月28日まで、8回(8日間)に渡り連載された「有価証券報告書の読み方(なるほど投資講座)」が分かりやすいです。各回の見出しを書き出してみます。

有価証券報告書の読み方(なるほど投資講座)
(1)企業の実態知る「情報の宝庫」
(2)虚偽記載で上場廃止の恐れも
(3)非財務情報の重要性高まる
(4)財務諸表、注記事項が充実
(5)M&Aの影響を探る
(6)リース、会計処理異なる2種
(7)退職給付会計で「備え」確認
(8)関連当事者取引にルール

有価証券報告書と決算短信の特徴説明から始まり、会計不祥事の主な例や企業情報の事業等のリスクの例まで。会計不祥事については2011年のオリンパスや2015年の東芝が記憶にあります。事業等のリスクの例では、各社様々。

例えば経営者の交代をリスクに挙げている企業があります。ソフトバンクグループです。ソフトバンクグループでは「孫正義会長兼社長に不測の事態が発生した場合、グループの事業展開に支障が生じる」と記載しています。ほかにも、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長、イオンの岡田元也社長らが交代リスクに挙げられています。

有価証券報告書には非財務情報として、その企業ならではの事業リスクの記載があります。どの企業がどんなリスクを示しているのか、調べてみるのも興味深いですね。

ほかには「はじめての有報」として日経新聞に2014年7月15日〜7月19日まで、5回(5日間)に渡り連載された記事があります。

はじめての有報
(1)経営成績示す「通信簿」― 企業の全容、1冊に。
(2)会社を動かす経営陣は ―1億円以上の役員報酬も。
(3)グループの全体像をつかむ ― 出資や役員のつながりを知る。
(4)親会社の情報で分かる稼ぎ方 ― 配当に充てる利益つかむ。
(5)大株主の顔ぶれを確かめる ― 海外投資家の売買にヒント。

またここ1年以内の雑誌ではこの2冊が分かりやすいです。

週刊ダイヤモンド
「特集 会社の数字がわかる反復練習 決算書100本ノック!」
2017年9月9日

週刊ダイヤモンド
「特集 これからの必須スキル まるごと一冊 会計&ファイナンス超理解」
2017年6月10日

有価証券報告書の読み方を、興味を持って調べてみると新聞や雑誌が定期的に特集を組んでいますね。


有価証券報告書と決算短信の違いは


ちなみに有価証券報告書と決算短信の違いは、毎日新聞の「ことば」によるとこうです。
有価証券報告書(有報、ゆうほう)は、上場企業が事業年度ごとに概況や財務内容、関係会社の状況など詳しい経営状況を説明する文書。 
金融商品取引法に基づき、事業年度の終了後3カ月以内に財務局に監査法人の意見を得て提出する義務がある。 
財務局に認められれば延長は可能だが、認められなければ一定期間の後に上場廃止となる。 
決算短信は有報より内容が簡潔で、証券取引所の規定で迅速な開示が義務づけられている。開示の遅れに罰則はない。

有価証券報告書や決算短信の知識は、私が挑戦している中小企業診断士試験にも求められます。曖昧な覚え方ではなく、人に説明できるぐらいまでしっかり内容と理屈の理解が必要です。