2017年12月16日土曜日

合同会社の税制有利。あのアマゾンやアップルも


こんにちは。ひとりです。

LIFE MAP,LLC(ライフマップ合同会社)という会社があります。竹川美奈子さんが代表を務める会社で、このブログでも投資信託関連の著書を紹介しました。

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LLC(合同会社)の税制有利。アマゾンやアップルも


「合同会社」と呼ぶ形態の企業が増えています。前述の竹川さんの会社もよく見ると合同会社(LLC、Limited Liability Company)です。

設立期間が株式会社の1〜2ヶ月と比較して2〜3週間と短く、また維持コストが安いこと、意思決定の仕組みを柔軟に設定できることなどが合同会社普及の背景にあります。

国内で新設された合同会社は2015年を皮切りに年間で2万社を超え、アマゾンジャパンなど、株式会社から合同会社に形態変更する動きも出ています。またアップルジャパンも合同会社です。

アマゾンジャパンのように米国企業の日本法人や子会社が合同会社に移行する例が目立ちますが、その理由は2つあります。


制約を取っ払った明快な組織運営に


理由の1つは、本社(本国)の意思決定の仕組みに簡単に合わせられるということがあります。例えば、ウォルマート・ストアーズ傘下の西友がそうです。西友は委員会設置会社で以前、会社法上もっとも制約がある内部機関を持っていました。それがウォルマート傘下で合同会社に形態変更してから、取締役会や各種委員会などを取り払った明快な組織運営に変わりました。


二重課税から免れる税務上のメリット


もう1つの理由が、日本と米国の二重課税から免れる米国固有の税制上のメリットです。国内にある米国企業の子会社が株式会社の場合、子会社が利益を上げると、日本で法人税が課せられます。これは米国の子会社に限らず通常のことですが、別に配当という形で米国の親会社は利益を受けとります。この配当にも米国側で課税されることで、二重課税が生じてしまいます。

国内の子会社が株式会社ではなく合同会社の場合、米国の親会社は日本子会社から受ける配当には課税されないように選ぶことができ、税務上有利になります。


合同会社と株式会社の主な違いは


株式会社には資本に関する規制や取締役などの意思決定機関のあり方が、会社法で明確に制約が設けられています。また任意組合とは異なり、合同会社は法人格を持ちますが、株式会社と比較して意思決定などの柔軟性が高いのが特徴です。

合同会社と株式会社の主な違いを比較してみます。

1)会社の所有と経営
株式会社:分離
合同会社:一体

所有と経営が分離している株式会社は、株主総会を必ず毎年開く必要があります。また業務上の意思決定を担う取締役を任命しなければいけません。対して合同会社は、出資者がそのまま社員となって、意思決定の仕方を自由に決めることができます。

2)定款(ていかん)認証
株式会社:必要
合同会社:不要

3)設立期間の目安
株式会社:1〜2ヶ月
合同会社:2〜3週間

4)決算公表義務
株式会社:ある
合同会社:なし

決算の公告義務があると毎年、官報や日刊紙への掲載予算、または電子公告の費用として10万円前後の費用がかかります。合同会社にはこの公告義務がありません。アマゾンやアップルなど規模の大きなビジネスを手掛ける企業には問題にならない額ですが、個人の副業や複業で利用する場合にはコスト削減のメリットは大きいです。

5)利益配分・議決権
株式会社:出資比率に応じる
合同会社:自由に決められる

配当や議決権を自由に設定できるのも合同会社の特徴です。株式会社の場合は普通株のみを発行しているため、保有株数に応じて議決権や配当が決まります。合同会社は出資持ち分の割合とは関係なく、議決権事項や配当方法を自由に定められます。※株式会社でも種類株を使って議決権を柔軟に設定できますが、合同会社は定款に記すだけで済みます

6)期間設計
株式会社:株主総会開催や取締役設置など規則に従う
合同会社:自由に決められる

7)会社更生法の適用
株式会社:受ける
合同会社:受けない

会社更生法が適用されると、金融機関などの担保権が制限されてしまいますが、合同会社はその心配がないため、金融機関からは好まれやすく、融資などの資金を得やすともいえます。

企業ではまた、保有する不動産を流動化して資金を調達するといったストラクチャードファイナンス(手法を組み合わせた資金供給)に合同会社が使われる例もあります。特別目的会社(SPC、Specific Purpose Company)が金融機関への利払いを担うこともありますが、それに合同会社を利用すれば決算公告や、会社法の大会社規制に伴うコストを抑えられます。


低い知名度のせいで信用が得られない


合同会社の知名度が低いせいで信用が得られないと、抵抗感を持つ人が多いように感じます。しかし税制の面で有利なのも事実です。さまざまな点を考慮したうえで、それぞれの目的や組織に合った法人形態を選択する、選択できる知識を身につけることが大切だと思います。