日経平均株価の終値は28日、前日比67円29銭(0.29%)安の2万3418円51銭でした。私の持ち株の評価損益比率は、同比3.3%安です。
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2020/10/28 |
限られた運転資金で事業をいかに営むか。コロナ禍にあって、上場企業がこれまで以上に資金効率の改善に力を入れています。
運転資金の効率を示す指数にキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)があります。材料、商品の仕入れから、商品を販売して現金を回収するまでの期間を表し、この期間が短いほうが事業に必要な資金が少なくて済みます。
具体的には、
(1)売掛債権回転日数 +(2)棚卸資産回転日数 –(3)買い入れ債務回転日数
で算出します。
(1)売掛債権回転日数と(2)棚卸資産回転日数は、売掛金や在庫を現金化するまでの期間を、(3)買い入れ債務回転日数は仕入れ代金を払うまでの期間です。
- (1)売掛債権回転日数 … 売掛金を現金化するまでの期間。売上債権 ÷ 1日当たりの売上高(売上高 ÷ 365日)で算出。
- (2)棚卸資産回転日数 … 在庫(棚卸資産)を現金化するまでの期間。棚卸資産 ÷ 1日当たりの売上原価(売上原価 ÷ 365日)で算出。
- (3)買い入れ債務回転日数 … 仕入れ代金を払うまでの期間。仕入債務 ÷ 1日当たりの売上原価(売上原価 ÷ 365日)で算出。
つまり、原材料費の支払いを遅らせ、在庫を減らし、販売代金の回収を早めるとCCCの日数が減ります。
CCCの日数削減を目標に掲げる、つまり、「現金をどう創出するか」を課題にする日本企業はここ10年で増えています。例えば日立製作所や物流機器大手のダイフクがそうで、日立は現場業務にCCCを落とし込むために「キャッシュフロー責任者」という役回りを作っています。製造や営業担当者にも積極的に関与してもらうためです。
CCCのメリットとして、資金回収や在庫管理に焦点が当たっていて、現場の業務に落とし込みやすいことが挙げられます。日立の現場では実際に、売掛金や棚卸資産の手持ち日数の改善策を考えて実行に移しています。またダイフクはこれまで、大半の取引先で納入工事を完了してから代金を回収していましたが、CCCの日数を減らすために工事の進捗度合いに応じて代金を受け取るなど資金回収方法を工夫しています。(ダイフクの企業広告が28日、日経朝刊1面に掲載されています)
一方で、CCCのデメリットも確認しておきます。それはキャッシュや在庫の管理以外に関する効率性や収益性の視点が入っていないことです。
CCC戦略なしにiPhoneやiPadは生まれなかった
海外主要企業の資金効率に目をやると、日本企業とのCCC日数の開きがよく見えます。CCCの優良企業として有名なのが米アップルです。アップルのCCCはマイナス26を示します。つまり、iPhone12などの商品が売れる前から、アップルの手元に現金が入ってくる理屈です。CCCがマイナスだと、原材料などの購入費の支払いよりも販売代金の回収が早いということで、売上高が増えるほど、社内に資金が溜まっていく仕組みです。
CCCの日数削減を生み出す、アップルのサプライチェーンをスティーブ・ジョブズ時代に構築したのが、現CEOのティム・クック氏です。原材料購入の交渉力が強いと、延ばした支払いは研究開発費などへの投資資金として確保できます。この経営資源を投下した結果生まれたのがiPhoneやiPadです。アップルの今日の繁栄は、CCC戦略なしには実現しなかったかもしれません。